最近、知り合いの方(70代男性)からこのようなご相談を受けました。
「所で頂いたメールのULRで見ますと山口さんはいろいろと多面的なお仕事を
されているようですね。一つだけ教えて頂きたいことがあります。
遺言についてです。公証役場の公正証書遺言でなくても最近新聞で見ましたが
パソコンで作成した書面もOKとか。
小生もこの夏で74歳、来年には後期高齢者になります。
PC書面遺言の作成で、何か参考になるようなものはありますでしょうか。
Net検索で、お勧めのものなどが有ればご推薦頂ければ幸甚です。
急ぎません。宜しくお願い致します。」
すぐにお返事を出しました。
自筆遺言書の事
貴方様の死後、ご家族へのお気持ちや遺産分割についてのご意思を遺言書の形で残されるのは大変貴いご配慮だと思います。
(1)自失遺言書をパソコンで作成できるか?
新聞でお読みになった記事は、最近の法緩和策として自筆遺言の際、「添付する財産目録はパソコン作成でも良い事になった」ということであって遺言書の本文はやはりすべてご本人が自筆作成される必要があります。その際、日付(何月何日まで明記)や署名など必要事項を記載されることの他に無用な争いを避けるため内容的に民法の趣旨に沿っていることが必要です。内容に問題がなく公正な遺言書は、2020年7月10日から地方法務局(遺言保管所)で預かるようになりました。手続きをして預けますと、生前はご自身で画像データで閲覧することが出来ますし、相続開始後には相続人が保管証明書が交付され遺言書の閲覧ができます。また、いったん預けた遺言書を後に書き直し預けなおすこともできます。手続き料は3900円です。
※ これまでの自筆遺言書は、家庭裁判所で検認を受け、死後も裁判所にて真正である事の裁定を受ける必要がありました。これに比べるとずっとスムースな手続きになります。
<遺言書保管制度の説明>
下記法務局の案内をご覧ください。
法務局における自筆証書遺言書保管制度について - moj.go.jp ・令和2年7月10日(金)から法務局において自筆証書遺言書を保管する制度が開始します。 ・ 令和2年7月1日から予約を開始する予定ですが,詳細はおってお知らせします。 ・令和2年6月18日(木) 「申請書等一覧」のページを公開しました。 www.moj.go.jp
(2)公証遺言書と言う選択
別の遺言書登録制度としては従来からある公証人と2名の立合い人による公証遺言書の制度です。こちらの方は、公証人役場で公証人が貴方様のご意向を聞いてタイプ打ちで作成し、保管する遺言書の形になります。公証人は市で2~3名、もと法曹出身者や退職法務局職員が法務省の認定を受けて、公証人役場(多くは地元商工会議所ビルの一隅)に詰めてサービスを行っています。内容については本人の意向を尊重しつつ適正な遺言を作成してくれるのである意味安心です。サービスの対価は公証人に依りますが、大体数万円かと思います。直接公証人役場にコンタクトするか、或いは行政書士か司法書士を雇います。こちらも後に書き直し再提出は可能ですが、毎回新たに上記料金がかかります。
藤沢公証役場:横浜地方法務局 横浜地方法務局横浜地方法務局の業務取扱時間 〒231-8411 横浜市中区北仲通5丁目57番地 横浜第2合同庁舎 電話:045-641-7461(代表) houmukyoku.moj.go.jp
(3)奥様の事 - 配偶者居住権の登録制度
一番心配されるのは死後奥様が不自由なく暮らしを続けられるか、特にご住居についてかと思います。これもお二人やお子様と機会を見てどの様なご希望かを確かめられるのが良いかと思います。
もし、奥様ご本人のご希望が現在のご住居に住み続けたいという事でしたら2020年4月より運用が始まった「配偶者居住権の登録」をされることをお勧めします。この登録によって、奥様は生涯、無償にて(不動産が財産分割の対象となったとしても)居住することが出来ます。
配偶者の居住権を長期的に保護するための方策(配偶者居住権)
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身又は 一定期間,配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住)が創設されています。
(4)今後の進め方
お住まいの市が遺言作成についての無料相談を行っています。ご自身の周りの戸籍謄本や家族関係の資料、資産を整理した上で、一度ご相談に行かれてはいかがでしょうか?その際、中谷様としてご遺族に対しどのような遺産配分が良いと考えられるか等ご心配、ご関心点を整理されて行かれると良いミーティングになるかと思います。
遺産相続で問題になるのは、思わぬ親族(婚外子)が出てきたりして話が複雑になることですので、親や奥様のご両親関連の戸籍なども取り寄せられるとより明確になります。
もちろん、遺言書には遺残相続についてのご意思だけでなく、ご家族への感謝やご希望、ご自分のお気持ちを充分お伝えになり、残されたご家族の気持ちを整理して差し上げる重要な意義も踏まれています。
暮らしの法務相談|藤沢市 市民自治部市民相談情報課広聴・相談担当 〒251-8601 藤沢市朝日町1番地の1 本庁舎4階. 電話番号:0466-50-3568(直通) www.city.fujisawa.kanagawa.jp
遺言書のサンプルとして例えば以下を参照ください。要は財産分与についての意向と、ご家族へのお気持ちが伝われば良いものです。すべて自筆で書きますが財産目録を添付する場合、目録はタイプ打ち【WORDなどで作成】でも良いとなった事が最近新聞でお読みの内容です。
遺言書の文面サンプルですが例えば次のような例は如何でしょう。
文面は自由ですが簡潔に、氏名は生年月日迄明確に特定、さらに分割の背景となる事情とお気持ち、希望など添えられると良いのではないでしょうか。
遺言書 第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金の2分の1を、次男XX○○(昭和△年△月△日生)に相続させる。 第2条 遺言者は、第1条記載の預貯金を除くその他一切の財産を、長男XX◎◎(昭和X年X月X日生)に相続させる。 第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、長男XX◎◎を指定する。 第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、長男XX◎◎を指定する。 付言 長男◎◎に多く相続させることにしたのは、一郎に家を守ってもらいたいからです。また、次男〇〇にはマンションを購入する際に援助しました。お母さんの気持ちを理解して、兄弟仲よく暮らしてください。 令和2年☆月☆☆日 住所 神奈川県鎌倉市△町ーー番地〇〇 遺言者 XX □□ 印
(5)相続関係図
死後ご遺志や葬儀、財産分割をスムースに進めるため、取り寄せた戸籍謄本を基に相続関係図を作成し、法務局に届けておく方法があります。死後、銀行など取引先に示すことで相続人は苦労なく財産処理等をすることが出来ます。
「法定相続情報証明制度」について:法務局 平成29年5月29日(月)から,全国の登記所(法務局)において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。 houmukyoku.moj.go.jp
以上、大変多くの事項で消化するのに時間がかかるかもしれません。
先ずは、将来ご家族や周りの方に対してどのようなご希望をお持ちであるかを良く整理され、どのようなご遺志を残したいか、まだまだ時間はあります、じっくりご検討されます様お願いします。
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